「切迫早産って、実際どんな症状?入院ってどんな感じ?仕事は続けられるの?」
そんな疑問や不安を抱えている妊婦さんへ。私は、助産師としてこれまで多くの切迫早産の患者さんと関わってきました。私自身も、妊娠中に切迫早産と診断されながら働いた経験があります。
この記事では切迫早産の基本的な知識から、私の体験談、仕事・私生活での工夫、切迫早産による入院生活の実際を助産師&当事者の視点から分かりやすく解説します。快適な入院生活に必要なアイテム(抱き枕、レンタルwi-fiなど)は、実際の患者さん達が持ってきている物をふまえてご紹介します!出産・産後の入院にも使えるアイテムです!
定義
そもそも早産とは?
妊娠37〜42週未満で出産することを正期産、
妊娠22〜37週未満で出産することを早産と定義します。
そして切迫早産とは
妊娠22〜37週未満で早産になる危険性が高い状態のことを指します。
こんな症状があります!
自覚する症状
- 下腹部の痛み
- お腹の張り
- 性器出血、血性のおりもの、水っぽいおりもの
病院で診察してから分かる兆候
- 子宮口が開いている。
- 頸管長(子宮の出口)が短くなる。一般的には25㎜未満で入院することが多いです。

切迫早産の主な原因・リスク要因
過去の妊娠歴や手術歴
- 前回の出産が早産であった。
- 子宮頸管円錐切除後(子宮頸がんのがんになる前の状態や、ごく早い段階で見つかった時に異常がある部分を円すいの形に切り取って取り除く手術)
今回の妊娠中の状態
- 細菌性腟症→絨毛膜羊膜炎(CAM)
- 細菌性腟症は膣内の常在菌である乳酸菌が何らかの原因で嫌気性菌に置き換わった状態。成人女性では比較的ありふれた病態です(10〜30%程度)。
- すべての細菌性腟症がCAMになる訳ではありません。
- CAMは細菌感染が赤ちゃんを覆っている卵膜に及んだ状態です。
- 早産を引き起こすケースがあり、比較的早い週数の早産に多い原因となっています。
- 頚管無力症
- お腹の張りを自覚しないまま、頸管長が短くなったり、子宮口が開いている状態。
その他にも以下の状態が挙げられます
- 多胎妊娠
- 羊水過多症
- 前置胎盤
- 常位胎盤早期剥離
- 重篤な合併妊娠
生活習慣(喫煙、痩せ)やストレス
- ストレスに対して、視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)が分泌されます。
- このCRHは、胎盤からもストレスに反応して分泌されます。
- CRHは、子宮を収縮させるオキシトシンやプロスタグランジンを分泌させます。
- CRH自体も赤ちゃんの肺の成熟も促すため、体がもう生まれていい?と勘違いし、結果的に早産になる可能性があります。
- このストレスというのは、職場や家庭でのストレスだけでなく、喫煙による低酸素や、やせによる低栄養でも引き起こされることがあります。
切迫早産とは早産になりそうな状態を示すので、これらに挙げた要因=早産の原因と必ずしも一致するわけではありません。
治療方針とその流れ
「CAMの疑い/赤ちゃんが元気がない場合」「破水している場合」「破水しておらず赤ちゃんが元気な場合」で治療方針が分かれます。
「CAMの疑い/赤ちゃんが元気がない場合」
- 早期に分娩の方向へ。
- 早産の時期であっても、24時間以内の分娩を目指した分娩誘発もしくは緊急帝王切開
- ただし赤ちゃんがまだ未熟な26週未満は個別に対応
「破水している場合」
- 32週未満(赤ちゃんの肺が未成熟)
- 母体に肺の成熟を促すためにステロイド注射を投与します。
- また破水による子宮内感染を防ぐために抗菌剤を投与します。
- 感染兆候や赤ちゃんの元気度を確認しながら、妊娠継続を目指します。
- 34週未満(赤ちゃんの肺が成熟途中)
- 破水による子宮内感染を防ぐために抗菌剤を投与します。
- 感染兆候や赤ちゃんの元気度を確認しながら、妊娠継続を目指します。
- 34週以降(赤ちゃんの肺が成熟)
- 分娩誘発もしくは、自然に陣痛がくるのを待ち、分娩となります。
「破水しておらず赤ちゃんが元気な場合」
- 子宮収縮抑制薬(塩酸リトドリン・硫酸マグネシウム)を投与し、妊娠継続を目指します。
- 34週未満でもう分娩になりそうな場合(切迫早産の症状が強くなり、子宮収縮抑制薬を投与しても改善しない)、母体に肺の成熟を促すためにステロイド注射を投与します。
おおむね上記の治療方針で、施設の産科・小児科のマンパワーや設備、母体の副作用/合併症などもふまえて、医療者・患者と話し合いながら治療方針が決まっていきます。
私の体験談:切迫早産と診断されながら、助産師として病棟勤務していた話
診断と経過
- 妊娠13週頃に性器出血がありました。その時は週数的に切迫流産という診断です。
- 2週間程度仕事を休み、妊娠16週頃に復帰しました。
- 妊娠22週を過ぎても張り止めの薬が必要ということで、切迫早産という診断へ。
症状
- 仕事で動いている時は集中しているからかお腹の張りは感じませんでした。
- ちょっと落ち着いて座った時、仕事が終わった時に、お腹が岩のように重く固くなっている事が多かったです。
- 切迫流産から仕事復帰して以降は性器出血もなく、お腹が張ることによる下腹部痛は感じたことがありませんでした。
治療
- 塩酸リトドリンを頓用で処方されました。
- お腹の張りは感じるけど、頸管長はいつも40㎜超え😂
- 頸管長がしっかりあるので、自宅安静や入院は必要ないけど、お腹の張りを感じるなら、気休め程度に処方されてたという感じ(笑)
- 正直、飲んでも張りはあまり変わらないなぁという感想。
- というか薬を飲む頃には、だいたい仕事が落ち着いて休める時だから、薬が効いてるのか安静が良かったのか、よく分からないのが正直なところ…
立ち仕事が多い医療職。張り止めにお世話になってる人が多いのでは…?
病棟の先輩方も飲まずに妊娠期間を終えた人はいないと思います(私調べですが🤣)
ただ副作用に関しては個人差があるみたいです。
飲んだことを後悔するくらい動悸する人や、
まったく動悸せず、そもそも張りにも効かない人も(私こっちタイプ🤣)
働き方や生活で工夫していたこと
あまり過敏にならない
- 前提として、妊婦健診で切迫早産気味と指摘されているなら話は別ですが!
- 特に指摘されていないのであれば過度に心配する必要はありません。
- 重たいものを持たないように!とよく言われるが、上の子がいたり、そのような業務に就かれている方もいますよね。
- 妊娠前の生活や筋力も影響すると思うが、自分が感じる症状を信じて仕事したらいいと思ってます。
- お腹の張りでじゃなくても「しんどいな」と思ったら休憩するべきだし、お腹が張る、お腹が痛い、出血したら、もちろん休む!それくらいの対処で十分です。
- ただし妊婦健診で切迫早産気味と指摘されているなら別!(大事なことなので2回目)
便秘は避ける
- 切迫早産と便秘が直接関係しているわけではありませんが、固い便が出る時に下腹部に力が入るのはよろしくないです。
- そもそも妊娠中の便秘自体、切迫早産に関係なく普通にしんどい🥲
- でも妊娠中は以下の理由で、便秘になりやすい状態です。
- 妊娠中はプロゲステロンの影響で腸の動きが鈍くなる
- 子宮が大きくなると隣り合っている腸が圧迫される
- 張り止めの薬でも腸の動きが鈍くなる
- 私も妊娠前は2日に1回くらいだったのが3〜4日に1回くらいになってました。便でお腹が張ってしんどい、とまではならなかったけど、酸化マグネシウムを飲み続け便が固くならないようには気をつけていました。
ずぼらダメ助産師なので、なんとくなく食物繊維が多いもの、なんとなく主食・タンパク質と野菜が揃うようにしていたくらいです。
主食とタンパク質だけになっちゃう時もありましたし、ジャンキーな物を食べちゃう日もあったので、食事内容には自信はありません(笑)
それでも水分だけは毎日欠かさず2リットル/日以上飲んでいました🙌
トコちゃんベルトの装着
- トコちゃんベルトが切迫早産予防に有用かというのは、トコちゃんベルトを開発された青葉さんのHPでは以下のように解説されています。
https://toco-care.com/toco-belt/care/body/adverse-preterm.php?utm_source=chatgpt.com - 助産師向けのセミナーや文献でも、骨盤ケアを行った群の方が早産率が低いという報告もありますが、大規模な比較研究やRCT(ランダム化比較試験)ではないため、医学的エビデンスとしてはまだ弱いという見方です。
- 産婦人科 診療ガイドラインにおいても、切迫早産の治療予防としては扱っておらず、補完的手段として考えるのが妥当かもしれません。
- ただ普段から患者さんに対して、妊娠初期からの骨盤支持を指導している身としては、装着しない訳にはいかない…🤔
- 分娩で赤ちゃんが骨盤を通ることに備えて、妊娠初期からリラキシンという骨盤周囲の靭帯を緩めるホルモンが分泌されます。
- リラキシンが靭帯や関節を緩めることで、腰痛や恥骨痛、関節のグラつきなどの不調を感じる人もおり、妊娠初期からトコちゃんベルトで骨盤を支えるよう指導しています。
蒸れるのが嫌、毎回巻くの忘れるなどの理由でつけない患者さんが多い中、私はちゃ〜〜んと妊娠初期からしてました(ドヤ)
というのも避妊時から生理のときだけ装着してたんですよね。
理由は「生理始めの腰痛がマシになるから」
- リラキシンの分泌は避妊時の排卵〜生理前にも分泌されるため、生理開始時にホルモンの影響が残っていると、腰痛や恥骨痛、関節のグラつきを感じることがあります。
- 私も生理始めに腰痛を感じることがあり、その時だけトコちゃんベルトを装着することで、腰痛が軽減するという効果を感じていたので、妊娠中もつけていました。
- それが切迫早産及び早産の予防として直接関係していたかは定かではないですが、妊娠中に腰痛が悪化するということはありませんでした。
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切迫早産で入院したらどんな生活?
入院期間
- 妊娠週数と症状の程度によって、数日〜数か月と様々です。
以下のようなパターンがあります。- 早い週数で入院して、正期産に入ってから退院する方
- まだ早産の時期だけど、切迫症状が改善して退院する方
- 切迫早産で入院管理していたが、そのまま早産になり産後の入院を経て退院する方
入院生活のリアル(点滴で子宮収縮抑制薬を投与している場合)
- 起床
- 7時頃 あれば採血・採尿(入院前の妊婦健診のペースと同じになるよう妊婦健診)
- 8時頃 朝食
- 10時頃 助産師が検温・切迫症状の観察
- NSTモニターでお腹の張りと赤ちゃんの元気度を観察
- 12時頃 昼食
- 14時頃 助産師が検温・切迫症状の観察
- 18時頃 夕食
- 20時頃 助産師が検温・切迫症状の観察
- 22時頃 消灯
安静度は医師の指示で変わってきます
- 点滴の差し替えの日だけシャワーが浴びれる、清拭だけなどの指示があります。
点滴はおおむね3日毎に差し替えです。 - 病室内、病棟内、病院内など、移動範囲にも指示があります。
- トイレ歩行可能、膀胱留置カテーテル挿入など、排泄方法も指示があります。
子宮収縮抑制薬の副作用についても観察します
- 点滴をし始めた時や、切迫症状がひどくなり投与量を増やした時に出やすくなります。
- 塩酸リトドリン(動悸・手の震え・ほてり)
- 硫酸マグネシウム(脱力感・頭がボーっとする・呼吸のしづらさ)
- 症状と併せて副作用を観察し、副作用により難しくなった日常動作を援助しています。
快適な入院生活を送るために
切迫早産の妊婦の入院生活は、出産・産後の入院の方に比べると時間を持て余している印象🤔(もちろん切迫症状が落ち着いていれば!ですけど)快適な入院生活を送るために、普段見ている入院患者さんがよく持参されているものをピックアップしてました!
抱き枕兼授乳クッション
- お腹が大きくなってくると、仰向けで寝るのが苦痛に。
- 横向き寝でも、お腹が横に寄ってしんどかったり腰にも響いてきます。
- 妊娠中は抱き枕として、産後は授乳クッションとして長く使えるタイプがいいかも。
- 個人的にはボタンやマジックテープで背中側を止めれるタイプだと授乳しやすいと思います。でも意外とお腹大きくて止めれない人いるから注意👀
- あと弾力があって固めのクッションの方が授乳がしやすいです。
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枕
- 睡眠の質確保という点では必要かもしれないが、良い枕は高い…!
- いきなり買うのではなく、まずは家の枕を持ってきてもらうだけで寝れるようになったという患者さんもいました。
- ただ病院のマットレスは固めなので、家の枕との相性は使ってみないと分かりません。
- 病院のマットレスと家の枕の相性が悪ければ、購入を考えるくらいでいいかも。
レンタルwi-fi
- 最近は病院のテレビよりパソコンでyoutubeやサブスク動画を見る方が増えています。
- 病院によってはFree Wi-Fiが使用できる病院もあります。
- ただ大きな病院だと使用できないことが多く、現に私の病院も時間制限があり21時には使用できなくなります。(消灯時間に合わせています)
- また使用するにあたりパスワード入力だけでなく、メールアドレスの登録や利用規約の同意が必要な場合があります。
- 公共のwi-fiでネットショッピングやパスワード入力が必要なサイトでは、セキュリティ面が心配なため、入院期間のみレンタルwi-fiを使用する方も見られます。
ワイヤレスイヤホン
- 大部屋で動画視聴の際には必須です!
- 完全に雑音シャットアウトされると、検温などで声をかけても気づかれないことも😅
- それはそれで最近のイヤホンはすごいな〜って思っています(笑)

Kindle
- あんまり本を読む人いないのかな?入院患者さんでは持っている人をあんまり見たことがなくて、なんで〜〜?ってなるくらい、個人的におすすめ!
- 別の記事で紹介しようと思っていますが、母乳育児やあかちゃんの睡眠の本など、妊娠中だからこそゆっくり読めて「読んでて良かった〜」と思える本に出会えます。
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まとめ
切迫早産のリスクや症状は個人差が大きいです。
でも、早めに知識を持っておくことで、自分や赤ちゃんを守る選択肢が広がります。
私自身の経験からも、「しんどいときは休む」「自分の感覚を信じて過度に心配しすぎない」ことの大切さを実感しています。日常生活では、便秘の予防やトコちゃんベルトの装着も、切迫早産の予防に少なからずつながっていると思います。
もし入院になった際、快適な入院生活にするためのグッズ(抱き枕兼授乳クッション、レンタルwi-fi、ワイヤレスイヤホン、Kindle)も紹介しました。よければチェックしてみてくださいね。この記事が、今まさに不安を抱えている妊婦さんの安心材料になれば幸いです。