「妊娠初期の出血」それは多くの妊婦が経験するものの、不安や戸惑いを伴う出来事です。
私自身、妊娠13週で初めての出血を経験し、驚きとともに「大丈夫なのか?」と何度も検索を繰り返しました。助産師としての知識があったものの、いざ自分の身に起こると冷静ではいられず、何度もネット検索を繰り返しました。
本記事では妊娠初期の出血の原因や、出血による受診の目安に加え、休業や業務調整を職場を伝える際のコミュニケーションのコツについて、私の実体験を交えながらご紹介します。働く妊婦さんが少しでも安心して過ごせるように…そんな思いを込めて書きました。
妊娠初期にある出血の原因
子宮頸部ポリープやびらんからの出血
妊娠すると、ホルモンの影響で子宮の入り口(子宮頸部)が充血しやすくなります。
性行為や内診などの刺激で出血することがあります。
子宮の形の異常
中隔子宮や双角子宮※などの先天性の子宮形態異常では、着床位置が不安定で出血しやすくなります。
妊娠前から子宮奇形が判明している場合や、妊娠初期に胎嚢の位置が通常と違う、妊娠初期の出血などをきっかけに、経膣エコーで判明することがあります
※中隔子宮と双角子宮は、どちらも 子宮内腔が2つに分かれている 形態異常ですが、形成の仕組みが違うため、治療(不妊治療や妊娠に影響を与える場合)の方針が異なってきます。


絨毛膜下血腫
妊娠初期に胎盤(絨毛膜)と子宮内壁の間に血液がたまる状態です。胎盤がまだうまく定着しきれていない場合に、胎盤と子宮内膜の間に血液が漏れ出すことがあります。
下腹部の違和感や痛みを伴うこともあります。エコーで血腫を確認されることがあります。
血腫があってもほとんどの妊婦は妊娠継続が可能ですが、血腫が大きいと流産・早産に移行したり、胎盤が剥がれやすいなどのリスクがあります。
切迫流産/流産
切迫流産とは、妊娠22週未満で流産発生の危険がある状態をいいます。
そして流産とは、妊娠22週未満で妊娠継続が不可能な状態をいいます。
- 稽留流産:胎児が子宮内で亡くなっており、子宮内に停滞している状態
- 進行流産:流産が進行し、切迫流産に比べて多量の性器出血、陣痛のような痛みがある
- 不全流産:流産が進行した結果、胎児と胎盤や臍帯などが完全に排出されず、一部残留している状態
- 完全流産:流産が進行した結果、胎児と胎盤や臍帯などが完全に排出された状態
どういった出血だと問題なのか
- 生理の多い時くらいの出血やレバーのような血の塊は受診
- 下腹部痛を伴うようであれば受診
- 少ない出血であれば、一旦安静にして持続するか観察
2時間以上持続するなら受診、治まっても次の日に改めて受診
私の病院では受診のタイミングを上記のように指導しています!
受診の際には、血のついたナプキンを持参しましょう。(ない場合は写真)
原因がどうであれ、約30%の妊婦が妊娠初期の出血を経験
私自身も初めて出血した時は怖くて、いろんなことを検索しました😓
妊娠初期に受診した身として、また普段は病院で受け入れる身として、該当しなくても不安があれば受診して良いと思います。
助産師として知識はある分「これは問題のない出血かな」と考察できても、その考えを肯定してくれる他者がいないと不安は拭えませんでした。
もし治療がいるパターンだった時に、受診をしなかった自分を責めないように、たくさんネット検索するよりか受診したほうが安心だと思います😌
わっさんの妊娠初期の出血はこうだった!
妊娠13週で初めての出血
- 夜勤中にトイレに行くと、茶色の乾いた少量の出血がありました。
- 一緒に夜勤をしていた先輩に経腹エコーをしてもらい、とりあえずお腹の中で動いてるのだけ確認しました😅(まだ胎動がわからない時期でした)
- 仕事が終わって、すぐに受診しました。
- 主治医から「よくあるよ。ちょっと無理したらまた出血するかもね」と言われ、止血剤と子宮収縮抑制薬をもらいました。
- 頸管長※は50㎜、絨毛膜下血腫はありませんでした。
※子宮頸部(出口の)長さ、25ミリ以下で入院になることが多いです
主治医から「1週間くらい休んだら?診断書書くよ」とも言われましたが、出血がある以外の症状はなく(つわりはあったけど)、これ以降に何かあって休みが足りなくなっても困ると言って、その時点では断りました。
今思えば、はっきり切迫流産と診断されてもないのに、休むことに対して、同僚や上司にどう思われるかを気にしていたのだと思います。
また初めての出血に対する動揺や妊娠継続ができるか不安に思う気持ちを、仕事を続けることであえて考えないようにしていたかもしれません。
初めての出血から4日後、2回目の出血
- 出勤してトイレに行くと出血していました。
- 初回より出血が多かったのと、前日からなんとなく腰が重かったのを覚えています。
- 始業前だったので先に受診しました(勤務先の病院をかかりつけにしていました)。
- 頸管長は40㎜、絨毛膜下血腫はありませんでした。前回と状態はほぼ変わりません。
- ただ主治医からは「2回目だし、さすがにもう休んだほうがいいんじゃない?」と言われ、そのまま2週間のお休みを頂くことになりました。
「出血するかもよ」と言われていたので、正直2回目の出血はあるかなぁと思ってました。その一方でこのまま何もなく休まずに働けたらいいなぁ、という期待もしてました。
2回目の出血の前日に「無理をした」という自覚があった

- 自分の業務はそこまで忙しくはないけど、病棟にはそれなりに患者数がいました。
そのため周りの業務を手伝いながら、仕事をしていました。 - 自分の業務に余裕があるとはいえ、相手の進捗状況をみながら、自分の業務もおろそかにならないように手伝うのって、結構気を遣うんですよね…😂
- そんな時に分娩室からナースコールが鳴るんですけど、だれも取らない、なかなか止まない。
- 「これは分娩担当の人が応援を呼んでいる?しかも誰も応援に行けない?」と思って、分娩室まで走っちゃったんですよね。
- 自分が駆けつけた後に他の人も来てくれたので、その場から離れたんですけど、「あ〜、やっちゃったな。走っちゃった…ごめんね」と反省しました。
休んだ当初に思っていたこと
自分を責める気持ち
無理をした自覚があったからこそ、今回の出血、特に2回目に関しては自分のせいだなぁ、と思いました。
無理をしなくてはいけなかった状況より、赤ちゃんのために仕事をセーブできなかった自分に対して情けなさを感じていました。
職場に対する申し訳なさ
2週間の休暇のうち夜勤が4回ありました。
その代わりに誰かが夜勤をしてくれたことや、上司が休みの間の業務調整をしてくれたことに申し訳無さを感じていました。
無理をしてしまった自分に対する労りや、仕事を休めてよかったというのは休んだ当初は全くなかったですね…
2週間の休暇中に思っていたこと
出血が治まるまでは家から出ずに安静
結局、休み始めて1週間位は1日に1回くらい茶褐色の出血があり、家から出ませんでした。
また安静にしていると、つわりがまたひどくなったように感じました。
出血が止まってからは時々外出
ずっと閉じこもってるといろんなことを考えてしまうので、近所で買い物をしたり、家で簡単な体操をしていました。
休んだ当初とは、また違った思いが芽生える
赤ちゃんに対する思い
- (まだ胎動感じないため)お腹の中でちゃんと生きてるかなぁ。
- 自分を責める気持ちが全てなくなったわけではないけど、純粋に赤ちゃんの無事を願う気持ちが強くなりました。
自分の体をケアしたいという思い
- 安静にしてるのに出血がしばらく止まらなかったのはなんでだろう?と疑問に。
- 出血をする前の腰痛や、その症状に左右差があったことから、骨盤の歪みや緩みを意識するようになりました。
- 安静による体力低下も心配になり、腹部に負担のない骨盤体操や上半身の筋トレなどをするようになりました。
お腹の中の赤ちゃんに対する愛着を深め、自分自身の生活を見つめ直すきっかけになりました。今後の妊娠生活に影響する大切な休暇だった、と今では思えます。
この経験を通して働く妊婦さんに伝えたいこと
職場でのコミュニケーションのコツ
伝えるタイミング
- 勤務調整の可能性があることはなるべく早くに報告しましょう。
- 症状が出た時点で仕事を休まなくてはいけない状況か、その判断するのは難しいです。
- しかし症状があり、診断の結果によっては休む可能性がある、受診結果が出るのがいつ頃になるかを先に報告することは出来ると思います。
私も出血した時点で上司に報告しました。
「さっきトイレで出血してました。受診してきていいですか。」
「また診察が終わったら病棟に戻ってきて報告します」
ちょっとこれは、むちゃくちゃタイムリーすぎるかな(笑)
医師からの指示を明確に述べる
- 医師からどの診断で、どのくらい休まなくてはいけないか、明確に述べることが大切。
- そのためには医師にしっかり確認する必要があります。
そのツールとして、母子健康管理指導事項連絡カードというものがあります。
- 母性健康管理指導事項連絡カード
医師や助産師が必要な措置を指導し、その内容を勤務先に伝えるためのカード - 会社はカードを受け取った場合、労働基準法、男女雇用機会均等法に基づき、可能な範囲で対応する義務がある。
- 必要な配慮とは、勤務時間の短縮・重労働の回避・休業などがあり、その部分を医師に確認する。
- 医師の指示とはいっても、妊婦さんの希望も聞きながら作成してくれる。
「職場には、今の私の状況をどのように説明したらいいですか?」と医師に聞いてみるのもいいと思います☺️
協力を得られやすい関係つくり
- 報告のタイミングや内容も大事ですが、私はこれが最重要だと思っています。
- 普段から同僚や上司との関係性を良くするために、常に自分ができる最善の仕事をすること、困っている人がいたら出来るだけ助けになることを心がけてます。(あたりまえのことなんですがね…)
- 独身時代、子育て世代の先輩が急に休んで夜勤を代わったり、時短で早く帰るから残りの仕事を請け負ったりしました。
- そういう時に、独身勢から「なんでうちらばっかり」「うちらが助けてもらう機会ないのに!」と文句が湧いてました。
- でもその時から、明日は我が身と思って、積極的に助けるようにしていたし、その先輩にしてあげたことが、その先輩から同じように返ってくることはなくても、私が困った時には他の誰かが助けてくれると思ってました。
- 実際、数年経って私が休んだときには、指導してきた後輩が助けてくれましたしね😳
- 後輩に対する指導も、私ができる最善の仕事として、気合い入れて指導してきたので、頼もしくなった後輩たちに助けられ、なんだかいろんな意味で救われました(笑)
私の子育てが落ち着いたら、また私が誰かを助ける番です。そういった思考や行動は、必ず誰かが見てくれていていつか自分を助けてくれるでしょう。
あなたと、あなたが大切に思うものを
尊重してくれる職場に身を置いてほしい
- 今回の記事を書くにあたり、妊娠初期の出血に関連して「仕事 休めない」「職場 伝え方」という検索をされている方が多いことを知りました。
- 実際、病院で接する切迫流産/早産の患者さんからも立ち仕事が多い、仕事を引き継げる人がいない、休みを言い出しづらいといった訴えをよくお聞きします。
- こういった訴えを聞く度に、助産師としては手を出せない部分でもあり、いつも無力感を覚えています。
- 私自身も同僚や上司にどう思われるかを気にして、最初の出血の時は、主治医にお休みを勧められたのに断りました。
- でも2回目の出血でお休みを頂くことになった際、上司から休みを渋られたり、何か嫌なことを言われることはありませんでした。同僚からも心配のLINEがきていました。
- 上司が夜勤の代わりを探したり、同僚が夜勤を増やしたり、私が見てない部分での負担はあったでしょうが、それを感じさせない対応をしてもらったことには感謝してもしきれません。
- すべての職場がそういった雰囲気とは限りませんが、あなた自身の体のことや、あなたが出血に対して不安に思う気持ち、赤ちゃんを案ずる気持ちを尊重してくれる職場に身を置いてほしいなという気持ちで、いつもお話を聞いてます。
- 妊娠中の体の変化や不安を抱えながら働くことは、本当に大変なことです。でもあなたの体と赤ちゃんのことを大切にしながら、働き続けることは決してわがままではありません。
- あなたが安心して妊娠期間を過ごせる環境を選ぶことが、最終的には職場にとっても、そして何よりもあなた自身と赤ちゃんにとって大切なこと。
自分の気持ちを大事にしながら、無理せず過ごしていけるように願っています。
まとめ
妊娠期の出血には以下のような原因があります。
- 子宮頸部ポリープやびらんからの出血
- 子宮の形の異常
- 絨毛膜下血腫
- 切迫流産/流産
妊娠期に出血した場合、以下のタイミングに受診を推奨します。
- 生理の多い時くらいの出血やレバーのような血の塊は受診
- 下腹部痛を伴うようであれば受診
- 少ない出血であれば、一旦安静にして持続するか観察
2時間以上持続するなら受診、治まっても次の日に改めて受診
仕事を休む際、職場でのコミュニケーションのコツは以下のとおりです。
- 体調の変化は、なるべく早くに伝える
- 母性健康管理指導事項連絡カードなどを用いて医師の指示を明確に伝える
- 普段から協力を得られやすい人間関係、環境づくりを構築する
仕事と妊娠の両立は大変ですが、自分の体を最優先に。不安な症状があれば無理せず、早めに医師に相談しましょう!